農村地域に建っているとは思えないくらいモダンでお洒落な新築一戸建てを紹介します。もともと長くこの地で暮らしてきた先祖の記憶があちこちに残る、そんな背景をもつ敷地の東側には母屋が建ち、西側には素晴らしい眺望が広がっています。記憶を継承する新築一戸建て、さっそく見てましょう。
周囲の昔ながらの集落にひと際目立つその外観は、シャープな印象の片流れ屋根と大きな開口部が特徴的です。スタジオアウラ一級建築士事務所が設計の際に考慮したのは西側の風景を取り込みつつ省エネを意識した生活を実現する家を建てることでした。
自然素材をふんだんに使用しながらも所々アイアンやインダストリアルな雰囲気の照明を組み合わせることであか抜けた印象を与えています。
LDKに繋がる1m上げたコリドーは縁側のような機能を果たし、風が通り抜ける明るいバッファーゾーンを作っています。庇を下げることで適度に日光を遮りながら眺望を楽しめる仕組みになっており、極力空調や換気のためのエネルギーを削減する快適な住環境を目指しています。
階段を数段上がるとコリドーです。スキップフロアを利用し空間に多様性を生み出しています。柱や梁がワンルーム型の空間に程よく軽快感と閾を作り出しています。
木製の片持ち階段がキッチンエリアを圧迫することなく軽やかな印象を与えてくれています。階段に合わせた造作家具とステンレスのキッチンが相性良く並んでいます。コリドーによって制御された光が柔らかく家全体に広がります。
時を経た自然が醸し出す風情を取り込める新築一戸建てもそう多くはありません。様々世代を超えた家族の記憶を継承するこの家も時と共に成長し、思い出を刻んでいくのでしょう。
吹抜けがもたらす大きな高窓からの採光により、冬でもきっと温かく快適な室内環境を維持することが可能なのでしょう。空気が循環し換気も十分確保できる設計が嬉しいですね。
玄関口には母屋から直接アプローチできる開口も設け、家族とのつながりを再編成するような住宅に仕上がっています。先祖代々築いてきた石積みや植木が新築一戸建てのモダンな雰囲気とは対照的ですが、記憶を継承するかのようにそっと寄り添い、新築の家を見守ってくれているようです。
母屋との間に設けた特別な開口から室内を介して山々の眺めがこれからも享受できますね。開放性を持った設計によって母屋と新築棟との行き来や交流も密になり、建築や空間を通して忘れ去られていく世代間の関係性をもう一度見直し育んでくれる家となりました。
Photographs: Ippei Shinzawa