昔は珍しくなかった平屋ですが、地価や建築技術が高くなるにつれ、いつからかあまり見かけない様になりました。しかし、二階建てのマイホームの為に働き詰めだった時代も過ぎた昨今、この平屋の魅力が注目されはじめています。一世帯ごとの人数が減り必要な部屋数が減ってきたこと、高齢化が進み2階が使いづらくなること、大地震に備え耐震性が重視されていることなど、色々理由は考えられますが、一番の理由は、震災を経て家族の絆が見直されていることかも知れません。同じレベルの空間で生活をしていれば、各人の行動範囲も自然と交わります。一つ屋根の下らしい生活を、平屋に見いだしてみませんか。
GOTO HISAYOSHI DESIGN OFFICEによる木造平屋です。子供の頃、画用紙に描いた夢の家のようですね。広々としたLDKが、青い芝生の広がる庭に向けて、大きな窓で開かれています。片流れ屋根の高低差を利用して、反対側の壁上部にも細長い窓が設置されており、右に芝生左に青空を眺めることが出きます。建築面積の大きい平屋は中心部が暗くなることが心配されますが、この細長い屋根の他にも中庭が設けられており、全ての部屋が明るく開放的です。
こちらは車椅子生活者の為に作られた平屋住宅です。車椅子での生活を想定した結果生まれた様々な工夫は、車椅子の有無に関わらず取り入れたいものになりました。例えば、大きめの間口や、段差のない部屋と部屋の繋がりは、開放的で清潔ですし、広いシャワールームは誰にとっても使い心地が良さそうです。湯船への移動部分や座敷部分の高さも、移動の便利さを考えて設定されていますが、結局は腰掛けやすい高さですから、これも誰にとっても使いやすい形を表しています。色々と参考にしたいアイデアの詰まったお宅です。
こちらはガレージハウスと言った感じです。幅の広い入り口は、そのまま通り土間リビングとなっており、ダイニングと一体化した大空間が広がります。前面アプローチ部分のコンクリート素材から土間リビングへの繋がりや、裏面の大きな開口部は、建物の内外の区別を曖昧にし、家の中を大自然と一体化した空間にしています。動線の中に屋外が組み入れられたDYGSAの設計です。
こちらも一階建ての平屋ですが、複数箇所に段差が設けられています。それというのも、設計を担当した太田則宏建築事務所は、空間に実際以上の奥行きを生み出す為に、重層的なズレの組み合わせるという操作を行っているからです。衝立のような間仕切り、通り土間と飛び石、異なるレベルで斜に向き合う窓、各空間が、ただズルズルと繋がっているのとは違う、緊張感を持った連なりの関係にあります。メリハリのあるグラマラスな家です。
緑の丘と青い空に挟まれた真っ白な家、平屋には珍しい二世帯住宅です。和室と外部エントランスホールのみを共有とし、親世帯と子世帯が左右に分かれます。白い外壁と大きな窓ガラスに写った青空が空と雲のカムフラージュの様に風景に溶け込む外観ですが、内部は木材を多用した落ち着きのある色味になっています。個別の空間はそれぞれに確保しながらもいつも側にいる親子関係。背中合わせの温もりを感じて、いつまでも一緒に過ごしたいですね。
有限会社アルキプラスによる、こちらの平屋は大変モダンですね。元は棚田であったという丘の上に立てられたこちらの家も、内部が複数のレベルに設定されています。傾斜地を、無理に平坦に整備するのではなく、その土地に合わせた形の家を建ててしまうという発想、素敵ですね。そして、その仕上がりもまたこんなに素敵になりました。キッチンとカウンター越しに対面するダイニングから、階段を2段上がった高さのリビング、ホテルのラウンジのような高級感があります。
青木昌則建築研究所は、敷地の傾斜を生かし、入り口の高さを少し上げた入り口の平屋を建てました。この入り口側を含め、家の外側は高い位置に細長い明かり取りの窓が付いているだけですので、プライバシーが完全に守られています。一方屋内は大変開放的で、中央の大きな中庭に向けて、各部屋に窓が設けられています。共用部分は掃き出し窓、個室は腰高窓になっており、家庭内の適度なプライバシーも考慮されています。
TNDESIGN一級建築士事務所によるこちらの平屋は、外観・内観ともにとてもモダンです。プライバシーを守るコンクリートの外壁は、人工素材ながらも石塀の詰まれたような継ぎ目を持ち、高さが抑えてあることに加え、砂利や緑地を設置することにより木造住宅の多い近隣の雰囲気を壊しません。内部は中庭に接する面、離れへの渡り廊下が全てガラスによって作られており屋外のような開放感です。無駄な物を削ぎ落とした建物の中、本当に必要な物だけを所有してスッキリとした暮らしが出来そうです。
一口に平屋と言っても長方形、L字、ロの字、色々なタイプを観てきましたが、こちらのお宅はUの字とでも言うべきでしょうか、とても独創的な間取りになっています。それぞれの部屋が美術館の回廊の様に連続して並び、奥に進む程にプライベートな生活空間となっています。家に帰ってから床に就くまでの生活動線に合わせるように並んだ各空間での時間を、一つ一つじっくりと味わいながら次の間へと進みたいですね。