今回紹介するのは昔ながらの木造住宅と、新たに整備された新興住宅地が入り混じる発展過程にある街に建てられた住宅。クライアントの敷地は幹線道路より少し高台にあり、道路と高低差がありました。南に接する道路は約2m高く幅が狭い、逆に北側隣地は敷地よりも約3m低いという敷地です。この高低差や道路からの視線の切り分けをどのようにプランに反映させるか、といったことが設計を担当したFLAME-Planningofficeの課題となりました。どのような住宅になったのでしょうか、さっそく見て行きましょう。
木の質感や温もりを感じさせるファサード、落ち着いた華やかさをプラスしている色、そして二階の一部を覆っている木製ルーバーが特徴的な外観です。ルーバーは適度に視線を遮りつつ光や空気は通すという機能的なもの。また夏の強い日差しを外部でカットすることで室内の急激な温度上昇を防ぐという効果もあります。
裏庭へとつながる広く開放されたエントランスは、外部からも視界が通りぬけるよう開口を配置し、建物に軽快感を与えています。吹抜けの天井、細身のガラスのドア、ユニークでキュートな照明が演出するこのエントランスは、その先にある舞台への花道を思わせるようなときめきに満ちています。
プライベートを確保しつつ、解放感ある空間作りを叶えたこちらの住宅は、敷地の高低差を利用し1階に家族の”たまり場”空間を配置しています。道路側は駐車場を兼ねて大きく後退させ、その後レベルを下げることにより、道路に向かい大きく開放しているにも関わらず程よく囲われたプライベート空間となっています。大きな開口部を持つ開放的なデザインが人気の昨今ですが、実際住んでみると視線が気になって落ち着かないのでは… と懸念している方には、このように程よく囲われたデザインがお勧めですよ。
キッチンはコンクリートのアイランドがクールな印象ながら、木製のキャビネットや柱、ライトブルーのグラデーションのタイルが北欧風の優しげな雰囲気をプラスした魅力的なスペースとなっています。ダイニングテーブル&チェアも北欧風にまとめて。コンクリートを使用したインテリアはモダン、クール、強いといった印象がありますが、木製プロダクトとミックスすることでこのようにほっこりしたナチュラルなスタイルだって可能なのです。
家族のたまり場となる1階と2階はお互いの気配を感じあえる吹抜け空間にてつながっています。そこに配置されたのはミニマルなデザインの階段。フローリングと同様木材のステップ、蹴り込みが無いので更に軽やかな印象。細身の黒いフレームが空間をきりりと引き締めて、単体でも絵になる美しい階段です。
2階はベッドルーム以外に多用途に使える空間が用意されており、子供の遊び場、勉強部屋・書斎・ゲストルームなど目的により自由に選択できるフレキシブルなスペースとなっています。そして外観写真でご覧になった木製ルーバー、その内側は心地良いデッキスペースとなっています.。これが外からの視線に対する緩衝帯となり、開放的でありながら程よい仕切りを持った寛ぎの内部空間を獲得したのです。